コラム
クリニック開業には様々な備品を用意しなければなりませんが、そのほとんどは開業スケジュールの後半に選定・手配をすることになります。
この時期になるとやるべきことが複数重なってくるので、早めにリスト化し手配を進めていくことが重要です。
本記事では、クリニック開業に必要な備品をリスト化し、スケジュールの中で無駄なく準備する方法を詳しく解説します。
クリニックの開業は、ほとんどのケースで1年〜1年半前から着手しますが、事業計画書や開業地選びが終わってから一気にスピードアップします。
そこで、計画の齟齬をきたさないよう、クリニック開業までのスケジュールで備品選びをどう考えておくか確認しておくことにしましょう。
クリニック開業までの準備期間は、出来る限り早くスタートさせることが成功の近道で、可能であればドクター自らが中心となって考える「経営理念・診療方針の決定」や「事業計画の策定」を1年以上前までに終わらせておくことが理想です。
それ以降のスケジュールを大まかにピックアップすると以下のようになります。
時期 | スケジュール |
7ヶ月~12ヶ月前 | ・資金調達・物件の選定(契約) |
4ヶ月~6ヶ月前 | ・内装工事・医療機器の選定・退職意思の伝達・スタッフ募集活動 |
2ヶ月~3ヶ月前 | ・スタッフ採用・消耗品やユニフォームなどの選定・広告活動 |
1ヵ月前 | ・スタッフ研修・医療機器等の搬入・各種行政手続き |
クリニック開業 |
備品といってもその範囲は非常に広く、X線CT・MRI・医療用レーザーといった大型機器から、医療衛生材料や事務用品などまでが含まれます。
つまり簡単にいえば、不動産や内装工事を除くほぼ全ての初期投資といえるでしょう。
特に大型医療機器については納入までの期間も長くなり、機器の種類によっては内装工事へ影響を与えるので早めの選定が必要です。
また発注後すぐに納品されるものについては、採用スタッフに選定作業を振るなど柔軟な対応を考えておきましょう。
先ほども触れたとおり大型の医療機器については納入までの期間を考え、診療方針を決定した段階である程度選定作業を進めておくべきでしょう。
また大型の家具などクリニックの内装イメージを考慮すべきものについては、設計事務所にコーディネートを依頼するのもオススメです。
では、それ以外の小型~中型の医療機器やOA・事務機器、家具・家電などは、どの段階から選定作業をすればよいのでしょうか。
余裕をもってクリニックの開業に臨みたいのであれば、6ヶ月前から備品選びに時間を割くことが望ましいでしょう。
一般的に内装工事が終わって引き渡しを受けてからクリニック開業までは1ヶ月程度なので、その間にうまく搬入・検品・整理といった作業を終えるためには納品スケジュールもしっかり考えることが必要です。
クリニック開業の2〜3ヶ月前には看護師をはじめとしたスタッフを採用しますが、医療機器以外の備品選びについてはスタッフの意見も参考にするとよいでしょう。
もちろんクリニックの基本コンセプトに沿ったチョイスが前提ですが、受付や待合室で必要になる備品、またユニフォームなどはスタッフの働きやすさとも密接に関係するものです。
それに加え、そのような選定作業をある程度任せることで「一緒にクリニックを作り上げている」という意識も高まることが期待できます。
クリニック開業に必要な備品をリスト化するにあたって、ある程度カテゴリ分けして考えることが効率化のポイントです。
カテゴリー分けの方法はいくつかありますが、まずは備品の種類ごとに分ける方法について考えてみましょう。
クリニックは医療を提供する場なので、診療内容に即した医療機器や医療設備がなければ開業できません。
勤務医であれば「あって当たり前」だった医療機器を、クリニックの開業に当たっては必要なものを考え自前で用意することになります。
どのような診療科で開業するかによって医療機器の種類や、設備投資額も大きく変わってきますが、一つ基準を設けるとしたら「どこまでの症例を自院で診察・治療するのか」を考えることです。
総合病院のような設備を揃えるのは現実的ではないので、「ここからは総合病院へ紹介する」という基準があれば、医療機器の選定もしやすくなるでしょう。
これは「経営理念・診療方針の決定」と深く関わる部分でもあるので、医療機器・利用設備の必要性と、導入費用と診療報酬とのバランスをよく考えなければなりません。
家具・什器や家電製品は、来院された患者さまやそのご家族が利用する待合室やトイレ、診察室や、スタッフの業務スペースやバックヤードなどのイメージや快適性を左右するポイントです。
今どき使えれば問題ないという考え方は時代遅れなので、少なくともクリニックの方向性に合った統一性は持たせるべきでしょう。
ただ、これらの備品は家電量販店やホームセンターなど、比較的どこでも手に入るものなので、それほど早くから決めなくてもよいものばかりです。
クリニックの運営に欠かせないのが受付から会計、そしてレセプト請求まで至る事務機器やレセコンなどの設備です。
また最近は電子カルテとレセコンを一体化、もしくは連携させたシステムが一般的なので、機能性や操作性なども十分考慮することが求められます。
これら以外にも最近はDX化(デジタルトランスフォーメーション)が進み、自動精算機、セミセルフレジなどの導入が増え省力化も進んでいるのが現実です。
もちろん費用面も気になるところですが、サポート体制まで考えておかなければクリニック開業後に思わぬトラブルもあり得ます。
選定で悩むことも十分考えられる設備で納入にも時間がかかるので、開業の6ヶ月前には何らかのアクションを起こしておくことがオススメです。
診療で用いる包帯やガーゼなどの消耗品、および医師・スタッフが着用する白衣やユニフォーム、そして事務用品やトイレ用品など、開業後のクリニックで必要な消耗品類は相当数になります。
これらは備品選びというよりは、安定的な供給面を考えた業者選びという要素が強く、事業者の評判なども参考にするとよいでしょう。
また、災害などの非常時のことも想定し、ある程度のストックを確保しておくことも大切です。
本記事では備品と消耗品を明確に区分することなく解説していますが、これらの違いは主に税務上の取り扱いに関係するものです。
クリニックの開業準備とは直接関係がありませんが、両者の違いについて簡単に説明しておきます。
個人クリニックを開業する場合、個人事業主として所得税の確定申告を行うことになります。
一般的に消耗品と言われているものは、購入した時に一時の損金(経費)となるもので、その基準は「使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のもの」とされています。
これに該当しなければ資産計上して数年にわたって費用計上(減価償却費)するのですが、条件によっては一時の経費にできるケースもあるので、これらについては無駄に考えることなく税理士などの専門家に相談する方が簡単です。
また節税面だけではなく補助金などの活用など、クリニック開業に関係する様々な助言も役に立つでしょう。
クリニック開業に必要な備品は多岐にわたりますが、ここではクリニックのスペースごとに必要な備品をリストアップしていきます。
備品や消耗品は、いくらリスト化してもいざ開業となると漏れが必ずあるものなので、リスト化のベースとしてご覧ください。
開業したクリニックに訪れた患者様が最初に入る場所が玄関・エントランスなので、決して疎かにはできないスペースです。
クリニック内を土足OKにするかどうかで違いはありますが、一番大事な目的は汚れやホコリを落としてもらうことだと理解しましょう。
これらの備品以外にも、スペースの余裕によっては観葉植物や置物・絵画など、患者様の印象に残る工夫が必要です。
受付と待合室には非常に多くの備品・消耗品が必要で、チョイスするポイントは患者様目線だけではなく、スタッフ目線も取り入れることです。
(受付)
なお、2023年5月8日まではコロナ対策として飛沫対策パーテーション等が必要でしたが、現在はクリニックの任意となっています。
(待合室)
小児科または子供の来院が多い診療科では、キッズスペースの確保も検討が必要で、その場合は危険性の少ない玩具や遊具、マットレスなども用意しましょう。
診察室は患者様の診察を行うクリニックの心臓部で、なおかつドクターが長い時間を過ごすスペースなので、ご自身の快適性も考慮すべき場所です。
これらに加え、診療科目によって注射台や注射器具、診察ベッドなどさらに必要な備品が増えていきます。
備品をリスト化するにあたっては、ドクターが開業前に努めていた病院などの診察室を参考にしながら、新しいクリニックの診察室のイメージを膨らませましょう。
スタッフルームは、ドクターやスタッフが出退勤時の着替えなどを行ったり、休憩時間を過ごしたりするための場所です。
また、バックヤードには薬品・備品の保管をするという目的もあるので、その点も考慮した備品選びをしましょう。
最近はスタッフルームの重要性がクローズアップされていて、スタッフの働くモチベーションの向上につながります。
逆に狭く休まらないバックヤードは、看護師やスタッフのクリニックに対する悪い口コミにも直結するので、軽く考えるべきではないスペースです。
クリニックの開業で備品選びというのは単に物品を購入する行為ではなく、クリニック作りの一部分といえる重要なものです。
そこで、クリニック開業にあたって考えるべき備品選びのポイントについて考えてみましょう。
クリニック開業で必要になる備品は、ドクターが考えた診療コンセプトや経営理念によって決まってくるものです。
これらが明確になっていなければ、ご自身で選ぼうがスタッフに任せようが備品選びは上手くいきません。
この点は備品選びだけではなく、開業後も全てに影響を及ぼすことなので、クリニックのコンセプトをしっかり決めてから準備に取り掛かるようにしましょう。
クリニックのコンセプトと同じだけ重要なのが開業場所と物件の選定で、ついつい立地にだけ目を奪われることが多い作業のようです。
意外と多い失敗事例が、医療機器に必要な電気容量が不足していたり、医療機器が搬入できない物件だったりというもので、かなり大きなミスだといえます。
これも診療コンセプトを明確にして、大きな医療機器を先に選定、もしくは方向性を明確にしていれば防げる失敗です。
クリニックにはいくつかのスペースを設けなければならず、よほど余裕がある場合を除き工夫しなければ動線の確保が難しくなります。
あまり無計画に備品を導入し過ぎると、スタッフの動線だけではなく患者様にも不便を強いることになりかねません。
場合によっては備品のサイズを考えなおしたり、壁掛けタイプのものを選定したり、スペース効率を考慮することが重要です。
クリニックの開業にあたっては、いろいろと理想を具現化したくなるものですが、適正コストを度外視した備品購入はクリニック経営を圧迫することになります。
大型の医療機器や事務機器・電子カルテなどは、購入以外にもリースやサブスクなどの選択肢もあるので、事業計画策定時によく考えてみるといいでしょう。
また、多少コストをかけたとしても業務効率向上により十分ペイできることもあり、このあたりも検討の価値がある要素です。
今後は医療人材確保の難しさから人件費の高騰が避けられないので、機器による省力化は避けては通れないポイントとなるでしょう。
高価な医療機器やOA機器ほど、価格の安さだけではなくサポート体制も選定時の重要な比較材料となります。
保証期間内のサポート内容やフォロー体制の確認だけではなく、保証期間終了後の対応についても十分な検討が必要です。
イニシャルコストが安く上がったとしても、トラブル発生時に長期間診療が止まってしまうようでは、むしろマイナス面が大きいといえます。
ドクターであれば、「安いがすぐに供給が止まってしまうジェネリックメーカー」の例をご存じのはずなので、信頼性にも重きを置きましょう。
クリニックの開業準備で備品選びや購入は終わりではなく、開業後も診療を続けていく限り続く作業です。
とくに医療衛生材料・事務用品などの消耗品は業者との付き合いも長くなるので、先を見越すことも大切なポイントとなるでしょう。
クリニックの開業時については、その時点でベストな備品選びと業者選びをしていても、社会情勢の変化とともにその状態が持続しなくなることも考えられます。
また、一つの業者とだけ取引をしていると知らない間に高い買い物をしていることも考えられるでしょう。
競争の原理が働かないと陥りがちなことなので、常に複数の購入先を考えておくことがオススメです。
これは価格だけではなく、非常時などの供給難への対策にもなるので、開業後も備品選びは常に最新化・最適化しておきましょう。
ドクターが一人で備品選びとその影響を考えつめることは現実的ではなく、肝心の診察にも良くない影響を与えます。
特に高額な備品の選定は、開業後の経営にも大きな影響をもたらす判断になるので、信頼できるコンサルタントを使って事業計画への影響を把握しておきましょう。
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クリニックの開業には非常に多くの準備が必要なうえ、開業が近づくほどマルチタスクが求められます。
そのため早めに取り組める作業は前倒しすることが重要で、そうしなければあまりに多い備品選びで疲労するばかりです。
その対策として利用シーンやエリアごとにリスト化したうえで、納期の長いものから計画的に選定を進めていきましょう。
本記事がその作業にお役に立てれば幸いです。