記事カテゴリー
タグ一覧

コラム

クリニックの開業祝いの意外な常識と注意すべき点を解説

知り合いや取引のあった医師がクリニックを開業するとき、日ごろの感謝やお祝いの気持ちを込めて開業祝いを贈る機会があると思います。
そんな機会に慣れている方ならともかく、不意に開業祝いを贈る場面を迎えたとき「何を贈ったら良いのか」や「相場っていくら位なの」という疑問に悩むものです。
本記事では、クリニックの開業祝で常識とされていることを学びながら、意外な落とし穴について解説します。



クリニック開院祝いの知られざるマナー

普段の生活の中でも「お祝い」をする場面は意外と多いもので、そのようなとき真っ先に気になってしまうのは「マナー違反で非常識だと思われたくない」という、強迫観念さえ感じる思いではないでしょうか。
まずは、クリニック開院にあたっての基本的なマナーについて、世の中で常識視されている知識を見ていきます。

お祝いを贈るタイミングとは?

何ごともタイミングというものは重要で、それを外してしまうとせっかくの気持ちが相手の心に残らないものです。
相手の気持ちになってみれば分かることですが、医師にとってクリニックの開業は大きな節目になることが理解できるでしょう。
1年以上前から準備に取り掛かり、開院の1週間前くらいまではバタバタしているのが一般的です。
そんな忙しいときに開業祝いを贈っても、場合によっては「それどころじゃない」という扱いをされるかもしれません。
そこで開業祝いを贈る理想的なタイミングを考えると、開院の数日前から前日までが無難でオススメです。
また、変に気を利かせて「開院が落ち着いてからにしよう」というのも、相手にお祝いの気持ちが伝わりにくくなるので避けましょう。

贈り方にも配慮が必要です

少し嫌らしい考え方かもしれませんが、クリニックの開業祝を贈るのであればその贈り方にも配慮が必要です。
これは贈るタイミングとも相通ずる話ですが、せっかくお祝いの気持ちを伝えるなら「手渡し」に勝るものはありません。
これはクリニックを開業する医師との距離感にもよりますが、近しいほど手渡しすべきでしょう。
近しい関係なら開業前の内覧会へ招待されると思うので、そのタイミングで手渡ししお祝いの言葉を添えるのが効果的です。
ただ、どうしても会えない場合などはメッセージカードを同封してお祝いの言葉を添えましょう。
お祝いで何より大事なのは、相手に気持ちを伝えることなので、ちょっとした手間は惜しむべきではありません。

気になる開院祝いの相場

お祝いで最も悩むのが「いくら位お金をかければ良いのか?」という点で、ネットを調べても結論を出しにくいものです。
まず押さえておかなければならないのは、「金額に正解はなく、相場という情報もあまり当てにならない」ということでしょう。
とはいえ、他人がどれくらいの費用を掛けているのかということは気になりますよね。
これは一般的に言われていることですが、1万円~3万円が多いようで近い関係でも5万円までだとされています。
これはお祝いを貰った相手がお返しに悩まないための配慮で、あまり気合の入ったお祝いは相手の負担になってしまうという想像力が不可欠です。

これを贈れば間違いない定番をご紹介

クリニックの開業祝で好まれるものは、あまり奇をてらわない定番の贈り物であることが事実のようです。
ついつい人目を引こうとして奇抜な贈り物をするのは逆効果なので、一般的に贈られている定番品を確認しましょう。

ド定番といえるお花

クリニックに限らず開業祝いで定番中の定番と言えるのがお花で、特にオススメで無難なのが胡蝶蘭です。
胡蝶蘭は見た目の華やかさだけではなく、その花言葉が「幸福が飛んでくる」「尊敬」「発展」という点が開業祝いで好まれる理由なのでしょう。
よく開業したてのクリニックに行けば、これ見よがしに胡蝶蘭が飾ってあるのを見ますが、定番ゆえの光景だといえます。
生花は置き場所や処分などに手間がかかるものなので、観葉植物を贈るのもありでしょう。
可能であれば事前確認をしたうえで、新しく開業するクリニックに合ったお花を選ぶことがオススメです。
一歩間違えれば贈ったお花が周囲に埋没するので、やはり贈る際の一言が大切だといえます。

相手の好みで選べるカタログギフト

相手が好きなものを選べるカタログギフトは、どんな場面でも喜ばれる贈り物でといえるでしょう。
カタログギフトには色々な種類がありますが、出来るだけ選択肢の多いギフトを贈ることが喜ばれるための基本です。
クリニックの開業では色々な消耗品や備品を買い揃える必要があるので、必需品以外を買えるカタログギフトは重宝されます。
贈った相手にあまり気を遣わせず、実用性も高いカタログギフトは開業祝いにピッタリの贈り物です。

あって困らないお菓子やコーヒー

お菓子やコーヒーは相手に気を遣わせず、さらにクリニックのスタッフの皆さんにも喜ばれる、これもクリニックの開業祝の定番ギフトです。
お菓子やコーヒーは、貰った医師やスタッフが嬉しいだけではなく、消費してしまえば無くなってしまう都合の良さが、送る側と贈られる側にとって大きなメリットといえます。
選ぶ際のポイントは、有名店のお菓子やハイクオリティのコーヒー豆など、それをチョイスしたことに感心させられることです。
今どきは贈られたものをすぐネットで検索し、その評価や口コミなどをチェックされるので、あなたのセンスを問われるかもしれません。

クリニックで使える実用品

「あって困らない」物の代表格は、クリニック開業後も使うことができる実用的な品物です。
クリニックは常に清潔さと患者様へ配慮した環境が求められるため、空気をキレイにする空気清浄機や乾燥を不正でウィルスの活動を抑える加湿器などを贈れば喜ばれます。
クリニックの開業準備は想像以上に忙しいものなので、いざ開業してから足りないものは必ずあるものです。
そのような「足りない点」をフォローできれば、嫌らしいかもしれませんが高評価を得られるでしょう。
実用品の範囲は幅広いもので空気清浄機や加湿器だけではなく、意外と飾り時計なども喜ばれるというアンケート結果もあります。
開院前の忙しい時期にさりげなく足りないものを聞き出せれば、開院後に長いこと記憶に残ることができるでしょう。

現金や商品券は野暮なの?

お祝いの中でも現金や商品券は額面がはっきり分かるものなので、送る側としても躊躇しがちになるものです。
ただ、クリニックの開院は思いのほかお金の掛かるもので、そんなときに現金のお祝いは内心嬉しいものです。
恐らく、ここで嬉しいという素直さを邪魔するのは日本人らしい奥ゆかしさで、そんな気持ちを察してあげるのも優しさといえるでしょう。
現金や商品券を贈る際は、蝶結びで紅白の祝儀袋に包んでお渡しするのが最低限のマナーで、袱紗と呼ばれる布に包んで持参するのが(マナー講師がいう)常識です。
当たり前のことですが、現金や商品券を渡す際には「開業おめでとうございます。クリニックのさらなる発展に寄与できれば幸いです」以上の言葉を用意しておきましょう。


絶対に避けるべき贈り物とは?

マナーというものはホントに難しいもので、こちらが良かれと思って贈ったクリニックの開業祝が思わぬ不評を呼ぶことがあります。
中には「今の時代、そんな遅れた考えでどうする!」なんていう意見もあるでしょうが、損得を考えれば無駄な批判は避けるべきです。
そこで、ここからは忌み嫌われる・・・と言われているクリニックの開業祝について考察してみます。

赤色や火に連想させる物

これは迷信のような話なのかもしれませんが、開業祝いや開店祝いに赤色の贈り物は良くないとされています。
その理由は、赤色は火事や火を連想させるからと言われており、さらに医療現場のクリニックでは血や緊急を連想させる色としてタブー視されがちです。
近しい間柄ではない医師が開業する場合は、このような赤色の開業祝を避けるべきなのでしょうが、これもケースバイケースだといえます。
最近ではクリニックのイメージカラーを「赤」にしている場合もあるので、近しい関係の医師が開業するようなケースではざっくばらんに聞いてみると良いでしょう。

プリザーブドフラワー

これも賛否が分かれる贈り物なのですが、ブリザーブドフラワーは「死んだ花を贈るのでクリニックの開業祝に相応しくない」という意見があります。
しかし受け取る側から考えてみれば、水をやるなどの手間も省け大いにありがたいはずです。
ただ、当たり前のことですが贈る側の思い込みだけでは思わぬ地雷を踏む危険性があります。
慶應義塾大学大学院経営管理研究科に提出された修士学位論文によると、親が医師であるという医師の世襲率は40%近くになるようなので、古い慣習で思わぬ批判を受けるかもしれません。
「君子危うきに近寄らず」と言いますが、その考えに同意できるのならブリザーブドフラワーは避けましょう。

スリッパ

クリニックに行けば普通に使われているスリッパですが、これがクリニックの開業祝いに送ってしまうと「えっ?」と思われるという意見があります。
スリッパなどの履物は「相手を踏みつける」ということを連想させるもので、縁起を担ぐような医師へ贈るものとしては相応しいものではありません。
もちろん先方からリクエストされたら差し支えないのですが、目上の方に対しては腰より下に身に着けるものを贈ることは失礼なことだとされています。

日持ちしない食べ物など

クリニックの開業前後は非常に忙しいことは容易に想像がつくと思いますが、日持ちしない食品などは避けた方が良いでしょう。
もしクリニックを開業される医師がケーキなどを好きだとしても、忙しくて休憩が取れないような状態だと「今食えってこと?」と思われ、贈り物が逆効果になりかねません。
もし、このような贈り物をするのであれば開業時ではなく、少し落ち着いた頃合いを見計らって持参するのが無難です。

クリニックのイメージを無視したような贈り物

余程親しい間柄の医師が開業する場合は、事前にクリニックのイメージが想像できると思います。
しかし、そうではない場合に絵画や時計などを贈ることは少しばかりリスキーな行為です。
クリニックのインテリアを兼ねた実用品であっても、イメージと合わないものであれば貰った方も困ってしまいます。
センスに自信があったとしても、自分勝手な思い込みは相手にとって迷惑になることを知りましょう。

クリニックの開院祝いと税金の意外な関係

ここまでは「贈る側」の視点に立って解説してきましたが、クリニックを開業して開院祝いを贈られる側に注意点はないのでしょうか。
実は油断していると思わぬ税金が課される可能性があるので、一般的な感覚で考えていると大きな実害が伴います。
ここからはお祝いを貰う立場での注意点や、気になる開業祝いのお返しについて考えてみることにしましょう。


お祝いなのに?税金が課税されます

日本において「お祝いを贈る」という行為は非常に日常的なもので、それに課税関係が生じるとはあまり想像できないものです。
しかし、クリニック開業に伴って受け取る開院祝いには所得税(個人クリニックの場合)が課税される可能性があります。
あります・・・というより、その可能性が高いというのが実情で以下のような基準で考えておけば、ほぼ間違いありません。

贈った相手課税される税金計上の仕方
法人所得税事業所得の収入
個人の事業関係者(取引先担当者等)所得税事業所得の収入
事業関係者以外の個人(親戚や知人)贈与税ほぼ非課税

法人から金品を受け取った場合、一般的には「一時所得」として所得税が課税されますが、所得税基本通達には「業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものを除く。」とされています。
実はクリニックを開業して法人から受け取るお祝いは、「業務に関して受けるもの」に該当し、クリニックの収入に加算して所得が出た場合には課税されることになります。
これは事業関係者の個人であっても同じ扱いとなり、要はクリニックへ事業上の見返りを求めるようなお祝いだということです。
これは「事業付随収入」といわれるもので、所得税基本通達において以下のようなものが該当するとされています。

  1. 事業の遂行上取引先又は使用人に対して貸し付けた貸付金の利子
  2. 事業用資産の購入に伴って景品として受ける金品
  3. 新聞販売店における折込広告収入
  4. 浴場業、飲食業等における広告の掲示による収入
  5. 医師又は歯科医師が、休日、祭日又は夜間に診療等を行うことにより地方公共団体等から支払を受ける委嘱料等


どうも納得できないような話ですが、後述するように裁判で判例も出ていることなので逆らうだけ無駄でしょう。
ただ、友人や親族から贈られる開業祝は贈与という以前に、「社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるもの」であれば、そもそも課税の対象ではありません。
この社会通念上相当という概念が難しいところなのですが、「うわっ!」と驚くような金額や品物でない限り心配する必要はないでしょう。
ちなみに、所得税が課税されるケースでは現金や有価証券だけではなく、品物であってもその時価相当額を見積もって収入に計上する必要があります。

判例に見る開業祝いと税金

全てのケースに該当しないのかもしれませんが、国税不服審判所の「平14.1.23裁決」では小児科への開業祝が事業収入に該当するという裁決事例があります。
このケースでは小児科医がクリニックを開業するにあたって開院披露パーティを開催し、そこへ参加した事業関係者から受け取った開業祝が争点になりました。
結論からいうと「本件祝金は、請求人が新たに事業として医療保健業を開業したことに伴い請求人の事業関係者から受領したものであることから、経済的実質から見れば事業の遂行に付随して生じた収入というべき」とされています。
限りなく事業に付随する収入に近く、これを贈与とするのは公平な税負担に反すると判断されたわけです。
収入に計上すべきかどうかの判断は、贈ってくれた相手がその金額を経費計上しているかどうかがポイントだといえるでしょう。

ちょっと気になるお返しの相場や品物

開院祝いを貰った場合のお返しは、クリニックの内覧会を開催するか否かで対応が変わってきます。
内覧会を開催する場合は、飲食を含めたおもてなしをするはずで、基本的にその行為がお返しと考えましょう。
それに加えて高額ではないお礼の品物をお渡しすれば、より丁寧な印象を与えることができます。
内覧会を開催しない場合は、開院祝いにそれぞれお返しを手配することになりますが、よく言われるように半返しが基本です。
あまり遅くならないよう、お祝いを頂いてから1~2週間でお返しするのが一般的な目安となります。

難しい判断はmedi-tax株式会社にお任せください

クリニックの開業に際して開院祝いを贈る側も受け取る側も、細かな気遣いが求められます。
また、受け取った側には所得税の課税なども関係するので、場合によっては慎重な対応が求められるでしょう。
あまり軽く考えずに後々の影響も考慮すれば、医業に強みを持つmedi-tax株式会社に御相談いただけたら、間違いのないアドバイスをすることが可能です。
特にクリニックを開業し開院祝いを受け取る側だと、慎重に対応しないと思わぬ課税が考えられます。
そんな無駄な出費を避けるためにも、是非当社の無料セミナーをご活用ください。

最後に

クリニックの開院祝いは、マナーや慣習を良く守ったうえで贈ることが、気持ちを伝える大切なポイントです。
またタイミングや贈るときに伝える言葉で、その効果は全く違うものになります。
本記事を参考にして、スムーズでスマートな開院祝いを贈り、しっかりお祝いの気持ちを伝えるようにしましょう。