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コラム

クリニックスタッフ採用の重要性を成功ポイントとともに解説!おすすめの採用媒体や注意点についても

「応募者が集まらない」「採用してもすぐ辞めてしまう」「理想の人材になかなか巡り会えない」
クリニックの採用活動で、こうした悩みを抱える経営者や採用担当者は少なくありません。
特に昨今、医療業界では人材不足が深刻化しており、適切な人材を確保することがますます難しくなっています。  スタッフ採用がうまくいかなければ、クリニックの運営に支障をきたし、患者へのサービス品質にも影響が出る可能性があります。
では、どのようにすれば採用活動を成功させ、長く働いてくれる信頼できるスタッフを確保できるのでしょうか。
本記事では、クリニックスタッフ採用の現状や課題を整理し、具体的な成功ポイントとともに注意点についても解説します。


クリニックにおけるスタッフ採用の重要性とは

クリニックにおけるスタッフの採用は、医療サービスの質と運営の成功に直結する極めて重要な要素です。その重要性は以下の通り、さまざまな場面で重要です。

  • 医療サービスの質の維持
  • チーム医療の実現
  • 患者満足度の向上
  • 地域医療に寄与
  • クリニックの理念の実現
  • クリニック運営の安定性に寄与
  • 業務効率の向上
  • クリニックの将来的な発展に貢献
  • 適切なスタッフ配置は、患者の安全と高品質な医療サービスの提供に不可欠です。また協調性のあるスタッフの採用は、効果的なチーム医療を実現させます。
    これらは患者の悩みを解消し、クリニックの満足度を高める要因です。特にクリニックは地域医療に密着しやすいため、地域医療の充実にも貢献します。
    さらに、クリニックの理念に沿う人材の採用はクリニック運営の安定性にも働きかけるため、業務効率の向上だけでなく、クリニックの将来的な発展にも寄与します。
    以上の理由から、クリニックにおけるスタッフ採用は、単なる人員確保以上の重要性を持つ重要なものなのです。

    クリニックにおけるスタッフ採用における課題と現状

    クリニックでのスタッフ採用にはいくつかの課題や現状があります。ここではどのような課題や現状があるか解説します。

    ①応募者が少ない

    クリニックにおけるスタッフ採用の最大の課題は、応募者の少なさです。応募者が少ない背景は以下の理由があります。

  • 医療業界全体の人手不足
  • 看護師の不足
  • 調査結果によると、クリニックのスタッフ採用における最大の課題として、42.2%が「応募者が少ないこと」を挙げています。これは採用プロセスにおいて最も深刻な問題です。医療業界全体で人手不足が慢性化しており、求職者数よりも求人数が多い買い手市場となっています。
    特に看護師の人手不足は深刻で、2023年1月時点での看護師の有効求人倍率は2.47倍と、日本の平均(1.25倍)を大きく上回っている状況です。この状況を改善するためには、給与水準の見直し、福利厚生の充実、研修・教育制度の整備、キャリアアップ支援など、総合的な対策が重要です。

    参考:PR TIMES「クリニックの人材採用の悩みのトップは「応募者の少なさ」」
    参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年10月分)について」

    ②離職率が高い

    クリニックにおけるスタッフ採用の課題として、離職率の高さが挙げられます。厚生労働省の調査によると、医療・福祉業界全体の離職率は13.5%で、産業全体の平均値13.9%をわずかに下回っています。
    しかし、これは決して低い数字ではなく、サービス業や教育業に次いで高い水準です。クリニックでは慢性的な人手不足により、スタッフ1人あたりの業務量が多くなりがちです。
    また、ワークライフバランスが悪く長時間労働や休日出勤が常態化しているため、プライベート時間が確保しにくくなっています。この他にも人間関係の問題や低賃金、 福利厚生が充実していないとの理由から、モチベーション低下にもつながっています。

    参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」

    ③キツいイメージがある

    クリニックにおけるスタッフ採用の課題として、「キツい」というイメージが挙げられます。この背景にはいくつかの要因があります。

  • 医療業界全体の人手不足
  • 看護師の需要過多
  • 離職率の高さ
  • 不規則な勤務体制
  • 以上の理由から、医療業界の仕事は「キツい」のではという憶測も存在します。これらのイメージを払拭しスタッフ採用を成功させるためには、労働環境の改善、適切な人員配置、業務効率化などの対策が必要です。

    ④採用スキームが乏しい

    クリニックにおけるスタッフ採用の課題として、採用スキームの乏しさや活用の不足が挙げられます。この背景には以下のような原因があります。

  • 無料の求人手段への依存
  • エージェント活用の不足
  • デジタル活用の遅れ
  • 採用方法の知識不足
  • 「応募者が少ないこと」に悩んでいるクリニックの採用媒体を調査したところ、最も多い求人手段は「ハローワーク」で65.9%、次いで「知人の紹介」が29.4%、「求人検索エンジン」が27.7%となっています。これらはいずれも採用側にとって無料の求人手段です。
    最近では医師や看護師、歯科衛生士の採用は、エージェントを利用するケースが増えていますが、全体的に見てもまだ十分とは言えません。
    また自院のホームページを活用した採用活動が十分に行われてなく、特にスマートフォン対応していないホームページの場合、若い世代の人材へのアプローチが不十分です。どのような媒体を使用して採用すべきかの知識も乏しいため、慢性的な人材不足に、より陥りやすいのです。

    参考:PR TIMES「クリニックの人材採用の悩みのトップは「応募者の少なさ」」

    ⑤業務上のリスクが大きい

    クリニックにおけるスタッフ採用の課題として、医療事故や感染のリスクが大きいことが挙げられます。主なリスクは以下の通りです。

  • 感染リスク
  • 医療事故のリスク
  • スタッフの心理的負担
  • 新型コロナウイルスの流行により、医療機関で働くことへの不安が高まっています。特に、疾病を持つ患者との直接的なやり取りが多い職種では、感染のリスクが高まるからです。
    また、人手不足や不適切な人材配置により、スタッフの業務負担が増加し、医療事故のリスクが高まる可能性も否めません。これはクリニックの評判や経営に、致命的な影響を与えるリスクもあります。
    さらに、これらの感染リスクや医療事故のリスクは、スタッフに大きな心理的負担をかけます。これが離職率の上昇や人材確保の困難につながっている要因です。


    クリニックスタッフの採用を成功させるポイント

    クリニックにおいて、人材確保は大きな課題です。では、クリニックスタッフを採用するにあたって、どのようにしたら採用を成功させられるのでしょうか。
    ここでは、スタッフの採用を成功させるためのポイントについて解説します。

    ①採用計画を検討する

    クリニックスタッフの採用を成功させるためのポイントとして、採用計画を慎重に検討することが重要です。採用計画で検討・決定する必要があるのか以下の通りです。

  • 必要な人材数の把握
  • 採用したい人物像の設定
  • 採用時期
  • 雇用形態
  • 募集方法
  • 選考プロセス
  • 採用基準
  • 育成計画
  • 柔軟な雇用形態を提供することで、優秀な人材を確保しやすくなります。クリニックの理念や診療方針に基づいて、採用したい人材像を具体的に定義します。求める経験、スキル、人柄を明確にすることで、適切な人材を見つけやすくなります。育成計画や引き継ぎのタイミングに基づいて採用時期を決定すると良いでしょう。一般的には半年程前から採用準備を始めるのが良いとされています。
    また、雇用形態をどうするかの検討も重要です。特に新規開業のクリニックの場合、さまざまな雇用形態を組み合わせて検討すると良いでしょう。
    さらに応募者の職歴・スキル・人柄・クリニックの理念への共感度など、具体的な採用基準を設定し、複数の視点から評価できるよう採用基準を決定すると良いでしょう。これにより、ミスマッチを防げます。
    これらの要素を慎重に検討し、体系的な採用計画を立てることで、クリニックに適した人材の確保と、長期的な運営の安定につなげられます。

    ②適正人数を把握する

    クリニックスタッフの採用を成功させるポイントとして、適正人数を把握することは非常に重要です。適正人数の把握には、以下の情報を参考にしてください。

  • 来院患者数から算出
  • 収入に基づいて人件費を算出
  • 雇用形態に基づき算出
  • 最大患者数の70%を目安とし、20人の患者に対して1人のスタッフが適正とされています。仮に1日の最大患者数が200人の場合、70%のに値する患者数は140人です。この患者数に対応するためには、140人÷20人=7名のスタッフが必要です。
    また、クリニックの医業収入の15%を人件費の目安として算出してみましょう。仮に医業収入2,000万円のクリニックの場合、人件費は300万円が適正となり、この数値は正社員1人分の賃金に相当します。人件費300万円の場合、正社員としては1人の採用ですが、パートや派遣などの場合、採用人数は変わります。
    パートを多く雇用することで人件費は抑えられますが、常勤スタッフをメインに据えることで安定した運営につながりやすいです。
    適正人数の把握は、クリニックの効率的な運営と質の高い医療サービスの提供に直結する重要な要素のため、総合的に考慮して決定しましょう。

    参考:厚生労働省 東北厚生局「保険医療機関・保険薬局の新規指定申請時における社会保険及び労働保険の適用状況の確認について」

    ③採用媒体を決定する

    クリニックスタッフの採用を成功させるポイントとして、適切な採用媒体の決定は非常に重要です。以下のような媒体を活用すると良いでしょう。

  • 医療専門の求人サイト
  • クリニックのホームページ
  • ハローワーク
  • リファラル採用
  • 幅広く複数の媒体を組み合わせることで、より効果的な採用活動が可能になります。詳細を後述していますので、ご確認ください。

    ④求人情報を作成する

    クリニックスタッフの採用を成功させるために、効果的な求人情報の作成は重要です。求人情報の作成にはいくつかのポイントがあります。

  • クリニックで働くメリットを伝える
  • クリニックの具体的な情報を掲載する
  • 給料面以外の魅力を伝える
  • 採用プロセスを明確にする
  • 総合病院とは異なるクリニック特有の魅力を具体的に記載します。例えば、ワークライフバランスの良さや、アットホームな雰囲気などです。他にも、院長の人柄や診療科目・勤務体制・スタッフの年代層・感染症対策への取り組みなど、求職者が知りたい具体的な情報を詳細に記載しましょう。

    給料面以外の福利厚生についても紹介します。例えば、ワクチン接種費用の一部負担・医療費の免除・無料健康診断の実施など、クリニック独自の特徴を掲載するのも良いでしょう。
    また、応募から採用までの流れを掲載して、応募者の不安を軽減するよう工夫しましょう。これらのポイントを押さえた求人情報を作成することで、クリニックの魅力を効果的に伝え、適切な人材の採用につながりやすくなります。

    ⑤採用基準を決定する

    適切な採用基準の決定も非常に重要です。

  • キャリアやスキルはどのくらいか
  • 人間性はどうか
  • チームワークは問題なさそうか
  • クリニックの理念を理解してくれそうか
  • 1クリニックでの経験やスキルなど応募者のこれまでの職歴を重視します。仮に経験が浅い場合でも、業務や研修などを通じて知識を身につけられそうかも重要なポイントです。
    また、患者に対して明るく分け隔てない対応ができ、職場内でのコミュニケーション能力と信頼関係を築く能力が必要です。
    さらに、クリニックの理念や院長の想いを理解し、共感してくれそうか、チームワークは問題なさそうかも基準にすると良いでしょう。
    これらの基準を明確に設定し、面接や書類選考の際に活用することで、クリニックに適した人材を効果的に採用することができます。


    クリニックにおすすめの採用媒体

    クリニック人材の採用には、幅広い媒体を活用し募集することが重要です。ここではクリニックにおすすめの採用媒体について解説します。

    医療求人サイト

    クリニック人材を採用するための媒体として、医療求人サイトの活用は効果的な方法の1つです。中でも、医療従事者向けの専門求人サイトの利用は、より適切な人材にアプローチできます。
    これらのサイトは医療業界に特化しているため、ミスマッチが起こりにくいのが特徴です。医療求人サイトでは、クリニックの特徴・募集要項・職場の雰囲気など、詳細な情報を掲載でき、オンラインで応募しやすいのもメリットです。
    また、複数の求人サイトを併用することで、より多くの求職者にアプローチできます。
    仮に求人サイトを活用する際は、クリニックのホームページとの連携も重要です。求職者は求人サイトで興味を持ったクリニックのホームページを確認する傾向が多いため、クリニックの理念に共感した人の応募も見込まれるでしょう。

    クリニックのホームページ

    クリニックのホームページは、人材採用において非常に効果的な媒体です。求職者は必ずといっていいほど、クリニックのホームページを確認します。院長や院内の雰囲気・働く環境・スタッフなどの情報を確認したいからです。
    ホームページは単なる求人情報の発信場所ではなく、クリニックの情報や理念を伝えたり求人情報や実際に働くスタッフの声などを掲載したりすることで、求職者の共感も得られます。採用媒体として求職者の視点に立った情報を発信することで、優秀な人材の確保にもつながります。

    ハローワーク

    クリニック人材を採用するための媒体として、ハローワークも効果的な選択肢の1つです。ハローワークの最大の魅力は無料で求人掲載が可能なことです。小規模なクリニックにとって、経費削減の観点からも魅力的な媒体です。ハローワークは公的機関であるため求職者からの信頼度が高く、地域に根ざした人材の採用が可能です。
    また、ハローワークの担当者は中立的な立場で求職者をサポートするため、無理な紹介や押し付けがありません。
    さらに、求職者は自宅からオンラインで求人を検索できるため、より多くの応募が期待できます。ハローワークを活用することで、クリニックは地域に密着した人材を効率的に採用できる可能性が高まります。

    リファラル採用

    リファラル採用とは、現在雇用している従業員の紹介により、新たなスタッフを確保する方法です。近年普及している採用方法です。リファラル採用には以下のメリットがあります。

  • 採用コストの削減が可能
  • 組織文化に適合する人材を見つけやすい
  • マッチング率が高く、定着率も向上しやすい
  • いわゆる口コミでの応募のためコストがかからず、また従業員からクリニックの特徴などが伝えられているため、組織の状況をより理解した人材の確保が可能です。さらに、マッチングが良く、定着率が高いのもメリットです。
    一方でデメリットもあります。

  • 同じ価値観の人材が集まりやすい
  • 紹介者が退職した場合、紹介された従業員も退職する可能性
  • そのため、採用時には求める人材の条件を明確にし、社員の理解とコミットメントを得ることが重要であり、不採用時には細心の注意を払う必要があります。

    クリニックにおけるスタッフ採用の注意点

    クリニックにおいて、スタッフを採用する場合の注意点には何があるのでしょうか。ここでは注意すると良い点について紹介します。

    ①面談時にメリットばかり話していないか

    クリニックスタッフを採用する際、応募者にとって耳障りの良い話ばかりをするのは避けましょう。良い話ばかりを強調して人材採用した場合、仮に応募者が採用となり働き始めたとしてギャップを感じると、早期離職につながる可能性があります。
    採用を焦るあまり、クリニックの現状をきちんと伝えることなく採用してしまうのは、双方にとっても良くありません。クリニックの実態を包み隠さず伝えることで、応募者との相互理解が深まり、ミスマッチを防ぐことができます。現実的な職場環境を理解した上で入職した人材は、長期的に定着する可能性が高くなるからです。

    ②チームワークを意識できそうか

    クリニックにおけるスタッフ採用の際、チームワークを意識できるかどうかは重要な点です。クリニックの運営は院長一人では成り立たず、医師・看護師・医療事務など全スタッフのチームワークが不可欠です。良好なチームワークは医療の質を向上させ、患者満足度にも大きく影響するからです。
    そのため、応募者がクリニックの理念や方針に共感し、チームの一員として協力できそうかを見極めることは非常に重要です。仮に自院に合わない人材を採用すると、強固なチームワークは形成されません。チームワークを意識できる人材を採用することで、クリニック全体の業務効率が向上し、より良い医療サービスの提供につながります。

    ③スキルと経験をしっかり確認する

    スキルと経験をしっかり確認することも非常に重要な点です。クリニックは大病院と異なり、研修体制が整っていないケースが多いのが現状です。そのため、応募者のこれまでの経験やスキルが直接業務に活かせるかどうか、慎重に見極める必要があります。
    また、クリニックの業務は医療行為だけでなく、事務作業や雑務など多岐にわたります。さまざまな仕事に柔軟に対応できるスキルを持ち合わしているかも確認しましょう。スキルと経験をしっかり確認することで、クリニックの運営に適した人材が採用でき、長期的な雇用にもつながります。

    ④勤務条件に合意が得られるようにする

    面接時には、勤務時間や給料・休日の3つを明確に説明する必要があります。基本的な勤務条件はクリニックや応募者双方において、誤解が生じないようにするのが重要だからです。
    特に、スタッフが5人未満の小規模クリニックでは社会保険加入義務がない場合があるため、応募者に国民年金・国民健康保険への自己加入を求めることがあります。そのため、小規模クリニックの場合には社会保険の加入条件について事前に説明し、了解を得ておく必要があります。
    また、クリニック勤務を希望する看護師は主婦も多いため、給与よりも勤務時間を重視する傾向です。変形労働時間制の適用可否なども含め、勤務時間について示すようにしましょう。

    まとめ

    クリニックの採用成功には計画的な準備と実践が鍵です。まず、採用計画を立て、必要な人員とスキルを明確化しましょう。
    次に、適切な採用媒体を選択します。求人サイトやハローワークだけでなく、クリニックのホームページやリファラル採用を組み合わせることで、多角的なアプローチが可能です。求人情報には、求職者が魅力を感じるポイント(職場環境や成長機会など)を具体的に記載しましょう。
    また、面談時には、スキルや経験を確認するだけでなく、勤務条件やチーム適性も評価し、双方が納得のうえで合意を得ることが重要です。
    採用後は、離職率を下げるためのフォロー体制を整備し、持続的な働きやすい環境も提供していきましょう。