コラム
クリニックの開業を決意してから大切なのは、しっかりとしたスケジュールを考え、それに沿ってしっかりと準備することです。
本記事では、主に独立してクリニックを開業するケースを想定し、スケジュール上の注意点も含めて詳しく解説します。
クリニックを開業する場合、その準備はいつくらいから開始するものなのか、どなたであっても気になる点だと思います。
事業承継などのケースを除き、開業から逆算して1年以上前から準備を始めることが一般的です。
スケジュールを大きく2つに分けると、構想を練って開業場所やクリニックの方針を決める「準備段階」と、それを実際に進めていく「実行段階」になり、それを大まかにまとめると以下のようになります。
【開業スケジュール】
時期 | スケジュール |
12ヶ月~18ヶ月前 | ・経営理念・診療方針の策定・事業計画書の作成 |
7ヶ月~12ヶ月前 | ・資金調達・物件の選定(契約) |
4ヶ月~6ヶ月前 | ・内装工事・医療機器の選定・退職意思の伝達 |
2ヶ月~3ヶ月前 | ・スタッフ採用・広告活動 |
1ヵ月前 | ・スタッフ研修・医療機器等の搬入・各種行政手続き |
クリニック開業 |
少し古い数値になりますが、日本医師会が発表した2009年のデータによると、新規で開業する医師の平均年齢は41.3歳でした。
これを見て早いと感じるか遅いと感じるかは人によりますが、多くの医師は大学卒業後十数年の勤務医経験を経て開業していることが分かります。
ただ、かつてのモデルケースは医局制度の弱体化によって変化しているようで、近年は比較的若い年齢での開業も増えているようです。
では、若い年齢のうちに開業する場合と、十分経験を積んでから開業するケースについて、それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
若いうちにクリニックを開業するということは、物理的に「長期間クリニックを経営できる」ということで、確実に以下のメリットを享受できます。
また「若い」ということは、体力面でも無理が利きやすく分院展開などの次のステップも視野に入れ、じっくりクリニック経営に向き合えるでしょう。
経験を積んでからクリニックを開業するメリットには、若い時に開業するほど明確なものはなく、個人ごとに差がありそうなものが多くなります。
これらの内容は明確なメリットというより、若くして開業した先生方の「経験を積んでからの方が良かった」という意見に多く見られる内容です。
ただ、人間若返ることはできないので、少なくとも「投資とその回収」という点だけでいえば早いクリニック開業の方が有利だと理解しておきましょう。
クリニックの開業へ向けた歩みの第一歩目は「経営理念・診療方針を決める」ことになります。
一見難しい言葉のように感じますが、簡単にいえば「どのような患者様に、どのような医療を提供していくか」ということで、これが決まらないことには何も進みません。
あまり難しく考えすぎず、「なぜ開業したいと思ったのか」を掘り下げていくと、自然と経営理念が形になっていくでしょう。
すこし変な話をすると、仮に開業の動機が「同期で先に開業したあいつに負けたくない」であっても、少なくとも進む方向性は見えてくるはずです。
そうすれば堂々と掲げられる経営理念や診療方針は、次第に明確になってきます。
ただ、自分一人で考えていては見えないことがあるものなので、コンサルタントに相談することで迷いが振り切れることもあるのでオススメです。
経営方針や診療方針が固まったら、すでに「どのような患者様へ何を提供するのか」が見えているはずです。
そこで取り掛かるのが、クリニック経営の成否を決めるといっても過言ではない「開業地選び」という重要ポイントになります。
開業地選びは集患数に直結する最重要ポイントと言え、なおかつ一度選定してしまえば途中で変更することが難しくなってしまいます。
クリニックの開業準備の中でも失敗できない判断になるので、考えるべき点について詳しく考えていきましょう。
開業地選びでは大きく2つの点について考えておく必要があり、一つが「どこに開業するか」というエリアと、もう一つが開業形態についてです。
ここでいう開業形態とは、一戸建てにするのかビルのテナントとして入居するのか、または医療モールへ開院するのかといった内容となります。
エリアと開業形態は密接な関係があり、例えば大都市圏の都心部であれば一戸建てでクリニックを開業するのは現実的ではありません。
またエリア選びは「経営理念・診療方針」ともリンクし、どのような患者にどのような医療を提供したいかによって開業エリアは異なってきます。
例えば一般内科に通う患者を考えれば、ほとんどは徒歩圏内に在住しているか勤務している人ですし、耳鼻科、精神科など特定の疾患に対応しているニッチな診療科目の場合は、多少遠くても通ってくれる可能性が上がると考えられます。
また、場合によっては「医局時代は家族との時間を作ることが出来なかったから、ゆったりと診察したい」と考えるなら、自宅から近い立地で開業地を探すこともアリでしょう。
この段階を過ぎたら具体的な物件探しのフェーズに移るのですが、先の工程へ進むほどやり直すハードルが上がってしまうので、様々な角度から慎重に検討すべきです。
開業したいエリアと開業の形態が決まったら、いよいよ物件探しに入るのですが探し方にはいくつかの選択肢があります。
開業エリアを歩いたりネットを利用したりして自分で探すことは現実的ではないので、それ以外の方法を選ぶのが一般的です。
この段階では、単なる不動産物件探しで終わらせるのではなく、しっかり診療圏調査を行います。
この診療圏調査とは、候補地で開業した場合に1日あたりどれくらいの患者の来院が見込めるのかを把握するための調査で、一般的に以下の数値で示されます。
※エリア人口×受療率÷(科目別競合医院数+1(=自院))=推定患者数
見てわかるとおり、エリア人口が多くてライバルクリニックが少ないほど推定患者数を多く期待できることになります。
ただ、そう単純にいかないことは先生方であれば理解できるでしょう。
エリア人口といっても、年齢層や属性によって集患の期待値は大きく変わり、またエリアの将来性まで加味しなければ正確な分析とはいえません。
この点については、medi-tax株式会社にご依頼いただけたら豊富なデータと経験をもとに、より正確な分析結果と最適な開業エリアの提案が可能です。
興味があればお時間のあるときに、medi-tax株式会社の無料相談をご利用ください。
開業地と物件選びでは多くの失敗事例が見られますが、なかには「そんなことが?」といったケースもあります。
高層マンションなどの建設が進む新興エリアや、ハイソな高級エリアには魅力を感じるものです。
ところがエリアに対するそのようなイメージと、クリニックの開業で成功できるエリアなのかという点は、必ずしも一致しません。
例えば新興エリアは若い世代が多い傾向があるので、高齢者をターゲットとしたクリニックを開業するとミスマッチとなります。
物件選びであまり「理想のクリニック像」を追い求めすぎると、物件を決められなくなってしまいます。
自ら土地を購入し理想のクリニックをゼロから作り上げるなら別ですが、賃貸物件で理想と完全に合致する物件はまず見つかりません。
立地や価格、広さ、使い勝手などのなかで重視したいポイントに優先順位をつけることが重要です。
それを基にして判断基準を考えておくことで、大きく迷うこともなくスケジュールを進めることができるでしょう。
これはクリニックの開業に慣れていない不動産屋などの仲介で起こりうることで、思わぬタイムロスや場合によっては解約料など余計な出費も発生します。
またクリニックが入居可だとしても、禁止事項により上手く開業できないケースや、搬入口から医療機器が入らないなどのトラブルも考えられます。
このような事態を防ぐポイントは、医療機関の物件探しに慣れた不動産会社または専門の開業コンサルタントに依頼することです。
そのような依頼先であれば、物件選びのポイントをしっかり押さえ、初歩的なミスを防ぐことができます。
クリニック開業のための物件が見つかり、いざ契約となる前に賃貸借契約はしっかり目を通しておくことが必要です。
建物の賃貸契約については、チェックすべき主なポイントは以下の各項目となります。
契約期間(賃貸借期間)はクリニックの場合でも様々で、短い場合で2年程度、長ければ10年以上の契約期間となります。
契約形態は大きく分けて「普通建物賃貸借契約」と「定期建物賃貸借契約」になり、それぞれの特徴を把握しておくことが重要です。
普通建物賃貸借契約の場合、賃貸借期間の満了が近づくと、契約終了または継続(更新)のいずれかを選択することになりますが、更新条項には目を通しておきましょう。
定期建物賃貸借契約では、契約期間が満了すると契約更新がなく、賃貸借契約は終了します。
物件を継続して使用したい場合は、新しい定期建物賃貸借契約を締結することになり、更新料が必要となる場合があります。
また、契約期間以外にも「中途解約」について、その手続きや費用負担の有無について確認しましょう。
物件の引き渡しがいつになり、どのタイミングから賃料が発生するのかは重要なチェックポイントです。
物件の引き渡しを受けてから内装工事などを行うので、開業時期から逆算すればいつまでに引き渡しを受けるべきか分かるでしょう。
また、古い物件では「内装工事の期間は賃料を免除する」といったケースがあったり、入居者を入れたいため数か月賃料の発生しない「フリーレント期間」を設定している物件があったりします。
まだ収入の発生しない準備段階の費用節約は大きな効果があるので、物件所有者へ交渉してもらうことも考えてみましょう。
「事業計画書」と聞くと何か面倒なことのように感じないでしょうか。しかし、事業計画書がなければクリニック開業に大きな支障をきたすばかりか、場合によっては開業できない可能性もあります。
そこで事業計画がどのような役割を持ち、それを作るために必要なステップについて詳しく見ていくことにしましょう。
事業計画書とは、クリニック開業へ向けた準備と、開業後の一定期間の収支見込みをまとめた書類で、資金調達のためになくてはならないものです。
より具体的にいえば、以下の3つの要素を考えて事業計画書を作成します。
こう見ていくと、クリニック開業の準備段階から開業後の一定期間までの「資金的な予定表」であり、クリニック経営が成り立つのか考える重要な工程であることが理解できるでしょう。
仮にクリニック開業のための資金全てを自己資金で賄えるとしても、収支計画なしに開業することは非常にリスクが高い行為です。
クリニック開業にあたっての初期投資額とは、クリニック開業前にかかる全ての支出が該当します。
主な初期投資を羅列すると、以下のようなものが該当するので、それぞれ詳細に算出もしくは見積もりしてみましょう。
ここまでは、開業前に出ていく一方になる金額になり必ず必要な費用ですが、この段階では全体の必要資金はまだ分かりません。
次にクリニックを開業してから毎月必要になってくるランニングコストを見積もりますが、大きく分けると売上(医業収入)の増減に合わせて変化する「変動費」と、一定額必ず出ていく「変動費」の2つです。
変動費は売上を上げるため直接かかる費用で「原価」ともいわれ、クリニックであれば薬品の仕入、診療材料の仕入、検査の委託費用が該当します。
一方固定費の方は、売上があってもなくても出ていく費用で、人件費や水道光熱費、リース料や家賃など多岐にわたります。
ランニングコストとサービスの質には相関関係があり、分かりやすい例を挙げればスタッフを少なくすればコストは下がりますが、それに反比例して顧客サービスの質が低下してしまうでしょう。
つまり開業後のクリニックをイメージしながら、ランニングコストに過不足が無いかを考えることも必要です。
事業計画でも難しいのが「医業収入の見積もり」で、開業エリア探しで参考データとなる「推定患者数」を元に、以下の算式で予想できます。
※1ヵ月の医業収入 = 平均診療単価 × 1日の推定患者数 × 営業日数
平均診療単価は、診療科ごと地域ごとにかなりの違いがありますが、参考までに東京都厚生局が発表している「令和5年度 東京都内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」では以下のとおりのレセプト単価となっています。
診療科 | レセプト1件あたりの平均点数 |
内科 (人工透析有以外(その他)) | 1,389点 |
内科 (人工透析有以外(在宅)) | 2,130点 |
内科 (人工透析有) | 10,550点 |
精神・神経科 | 1,492点 |
小児科 | 1,915点 |
外科 | 1,626点 |
整形外科 | 1,437点 |
皮膚科 | 699点 |
泌尿器科 | 3,264点 |
産婦人科 | 3,306点 |
眼科 | 944点 |
耳鼻咽喉科 | 1.012点 |
歯科 | 1.229点 |
乱暴ですが、東京都で一般内科クリニックを開業し1日に40人の患者が来院したとして、1ヶ月に19日(週休2日換算・祝日を加味)診療した場合、以下の売り上げ見込みになります。
※13,890円 × 40人 × 19日 = 10,556,400円(1ヶ月の医業収入)
もちろん一般内科といってもクリニックごとに診察患者の年齢層や属性も変わり、また開業後すぐ推定患者数が来院してくれる保証はありません。
しかし少なくとも目標値としての目安にはなり、事業計画書の根拠となります。
クリニックは公益性の高い事業ですが、けっしてボランティアではありません。事業計画を考えるとき、手元にいくら残したいか(利益をいくら出したいか)をしっかり考えておくことも必要です。
利益を出すことは、開業したクリニックを継続するためにひつようなことで、ご自身の生活費だけではなく利益から開業時に借りたお金の元金償還をしていかなければなりません。
手元にお金が残らないようでは、借入返済や生活がままならなくなってしまうのです。
また、開業時に用意する資金は初期投資で全て無くなるような計画ではなく、一定額の運転資金を手元に残しておくことも考えておきましょう。
資金ショートはクリニック経営の失敗と同義なので、その点もしっかり考慮しなければなりません。
事業計画書に付随して作成する「資金繰り表」とは、一定期間における現預金の収入や支出を記入した「お金の予定表」です。
先ほども触れたとおり、支払いが出来ない状態はクリニック経営で絶対に避けなければならないので、事業の収益性と同じくらい重要な書類となります。
保険診療などは保険者からの支払いが2ヶ月後になるので、そのような点も加味して現預金残高に余裕のある計画になるよう注意します。
クリニックの開業を決意して「経営理念・診療方針」が決まったら、開業エリア・物件選びや事業計画の作成と並行して行うのが「開業資金の準備と調達」です。
ここではクリニック開業に必要な資金準備について、重要なポイントを確認してみましょう。
事業計画で開業時に必要な資金がある程度明確になったら、それをどのように用意するか具体的に考えなければなりません。
一般的なクリニック開業では、手持ちの自己資金と金融機関からの借入でまかなうことがほとんどです。
自己資金がどれくらい必要なのかは、融資を申し込む金融機関によって差がありますが、融資の条件として「必要資金の1~2割の自己資金があること」というケースが多く見られます。
例えば必要な資金総額が8,000万円だったとしたら、800~1,600万円の自己資金がなければ、融資を受けられない可能性が高くなるということです。
クリニック開業の場合、以下のような金融機関を利用することが多く、その特徴を把握しておきましょう。
クリニックを開業するとき、資金調達先として真っ先に検討すべき金融機関が「日本政策金融公庫」となります。
日本政策金融公庫は、個人での創業や中小企業の経営支援を行う政府系の金融機関で、低い固定金利で融資を受けられるのが魅力です。
クリニック開業では、創業・スタートアップを支援する「新規開業資金」が利用でき、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)となります。
返済期間は20年以内(運転資金は10年以内)と長めなのも魅力ですが、審査が難しく時間もかかることがデメリットです。
各都道府県の医師会の多くで、医師信用組合や地方自治体と連携しクリニックの開業に特化した開業支援ローンを用意しています。
当然のように医師会への加入が条件ですが、融資限度額も日本政策金融公庫より多く、医師にとっては使い勝手の良い金融商品だといえるでしょう。
また自治体制度融資も選択肢の一つで、創業支援、産業振興などの経済発展のために低金利で融資を活用できます。
多くの場合、都道府県や市区町村などの自治体と信用保証協会と金融機関による三者協調により成り立っていている制度です。
一般の民間金融機関も融資を申し込む選択肢の一つですが、大手のメガバンクより開業地にある地元金融機関の方が、より審査が通りやすい傾向があります。
金融機関によっては、融資だけではなくビジネスサポートやスタッフの研修を行っているケースもあるので、開業準備の手助けとなるでしょう。
利用する場合は、いきなり銀行の窓口へ行くのではなく、金融機関とパイプのある税理士事務所やコンサルタントを利用するのがオススメです。
これらの融資以外にも、医療機器など高額機材のリースなどの活用も検討し最適な資金計画を立てることで、スムーズな開業が出来るようになります。
クリニック開業も必要な資金額は、診療科によって大きく違いがあり、また開業エリアも大きな影響を与える要素です。
ただ、大まかな目安を知っておくことで、少なからずイメージが広がると思うので、一般的に言われている必要資金の相場を確認してみましょう。
診療科 | 必要資金 | 備考 |
内科 | 5,000~8,000万円 | 消化器内科は、下部内視鏡検査をする場合、回復室やトイレが複数必要なため、50坪程度の広さが必要。 |
皮膚科 | 4,000~6,000万円 | 保険診療がメインなら必要資金は多くならないが、自由診療のレーザー機器、美容系機器を導入する場合は高額になる。 |
眼科 | 6,000~7,500万円 | 治療の範囲や対象患者の年齢によって、立地条件、手術対応、設備機器の構成が大きく変わる。 |
耳鼻咽喉科 | 6,000~8,000万円 | 診療内容・手術により必要な医療機器は異なる。 |
整形外科 | 6,000~8,000万円 | リハビリ機器や運動機器の設備により、理学療法士の数や広さを考える必要があり、設備も高額になる。 |
精神科・心療内科 | 1,000~2,500万円 | 広さも高額な医療機器も不要で開業資金が少なく開業可能。 |
診療科によって開業資金に違いが出るのは、診察室や設備機器を入れるための広さと診療に必要な医療設備が変わってくることによります。
また自由診療で高額な治療を提供する場合は、内装や設備のグレードを上げることも必要です。
クリニック開業の軸となる診療方針の策定から、物件の選定、資金調達まで乗り越えれば、あとは開業へ向けた具体的な作業に入っていきます。
ここからはクリニック開業へ向けた最終段階の各工程について、抑えるべきポイントを確認していきましょう。
物件が決まって契約を済ませると、概ね4~6ヶ月で開業できることが一般的なので、物件が決まった段階で勤務先へ退職の意思を伝えましょう。
後で詳しく解説しますが、保険診療をするための「保健医療機関指定申請」を提出するときには常勤医としては退職している必要があるので、スケジュールをしっかり確認して退職日を伝えます。
退職に際しては、これまでの関係性などを悪化させたくないものなので、医局や病院の事情も考慮したタイミングを考えましょう。
物件が決まったら内装工事を発注するのですが、ターゲットとなる患者層や診療方針を踏まえたデザインにすることが重要です。
また工事が始まる前の設計段階で保健所への事前相談がひつようになります。構造設備上の不備があると、医療機関の開設許可が下りないことがあり、その場合は改修工事など余計な出費を強いられるかもしれません。
そのような事態を避けるためには、クリニックの工事に精通している建設業者や、コンサルタントの助言を受けることもオススメです。
医療機器は診療を行っていくうえで必要最小限のものから、必要度を考えながら積み上げ方式で選定していきましょう。
勤務医時代は病院や医局が購入した医療機器を使えたのが、クリニックを開業すると全て自前で揃えることになります。
勤務医時代の患者と開業後の患者は必ずしも同じ層だとは限らないので、最初からグレードの高い医療機器を購入するのは考えものです。
事業計画と照らし合わせて、採算が合うかどうか検討することが必要でしょう。
新規にクリニックを開業する場合、何もしなければ人々に知られることはないので、事前の広告活動は極めて重要です。
広告活動にはいくつかの種類があり、現在主流になっていて効果的な手段は「ホームページ」と「口コミ」の活用だといえます。
もちろんクリニックの存在を知ってもらうための看板や、フリーペーパー・チラシなど紙媒体にも一定の効果は見込めるでしょう。
広告活動のポイントは、やはりターゲットとなる患者層を意識した広告方法を考えることです。
例えば地域密着型の医療を目指すのなら、地域の集会などへ出席することも立派な広告活動となります。
どのようなスタッフを採用するのかは、クリニックの雰囲気を左右する重要ポイントです。
ただ、これからクリニックの開業を考えている場合、スタッフの募集が大きな難関になる可能性があります。
ご存知のように、看護師はどの医療機関でも慢性的に不足状態が続いて、求人誌へ掲載だけでは心もとないのが現実です。
力量をよく知る看護師が現在の勤務先から一緒に来てくれるのが理想ですが、それが難しい場合は有料の人材紹介サービスの活用も検討しましょう。
また看護師以外のスタッフについても、人手不足の影響が考えられるので、余裕をもった採用スケジュールを組むことが必要です。
クリニックの開業にあたっては、保健所に提出する「診療所開設届」や厚生局に提出する「保険医療機関指定申請」など、様々な届出が必要です。
特に保健所への申請は、物件の契約前に事前相談しておくことをオススメします。それというのも、物件自体に問題があって保健所から開設許可が下りないことを避けるためです。
保健所と厚生局に提出する届出は、以下のポイントさえ押さえておけば問題はないでしょう。
開設した日から10日以内に、医療機関の所在地を所管する保健所に開設届を提出します。提出すると実地検査を経て数日後に許可が下り、この段階で自費診療だけは可能です。
保険診療を行うためには、医療機関の所在する地域を管轄する地方厚生局都道府県事務所に、保健医療機関指定申請をしなければなりません。
申請には保健所の開設届の写しが必要なので、必然的に保健所の手続きの後に申請することになります。
厚生局ごとに申請書提出の締切日が違うので、事前に確認しておきましょう。締切日までに提出すると、翌月1日から保険診療可能となります。
これらの手続き以外にも、税金の関係や社会保険・雇用保険の申請など、やるべきことが多いので、専門家に依頼することも検討しましょう。
クリニック開業へ向けたスケジュールを確認していくと、かなり忙しくやるべきことが多い印象を持たれたのではないでしょうか。
もちろん全てを一人で進めることは不可能ではありません。ただ、勤務医として働きながら並行してこれらの作業をするのは現実的ではありません。
では外部のコンサルタントや税理士の力を借りるとして、どの段階で利用するのがベストな選択なのでしょうか。
答えは「クリニックの開業を思い立った時」で、経営理念・診療方針の策定段階からサポートを受けることで、一貫性のあるスケジュール管理が可能になります。
また開業までではなく、開業後のサポートを行っているコンサルタントや税理士に依頼することで、経営上の様々なお悩みや負担が軽くなるでしょう。
いざクリニック開業まで漕ぎつけて、そこでホッとしている余裕はありません。クリニック開業はゴールではなく、その後長く続くクリニック経営のスタートなのです。
ここではクリニック開業後に起こりがちなトラブルについて、その原因を考えてみます。
開業された先生方の多くが経験するのが、クリニック開業してから思ったほど集患できず、経営や資金に不安を覚えることです。
一般的にはクリニックの経営が軌道に乗るまで1年以上かかると言われているので、このような不安を感じないためには少しきつめの事業計画を立てることがポイントとなります。
開業から目標の集患数へ達するまでの期間を長めに取り、診療単価も抑え目に見積もることが重要です。
その上で実際の集患数と目標値を比較しながら、課題が見つかればその対処をしていきます。
2~3年で軌道に乗せることを目標にすれば、無駄に焦る必要はなくなるでしょう。
開業したてのクリニックは決して大所帯ではないので、スタッフ間のトラブルは非常に大きな問題になりがちです。
ある意味で、避けられないトラブルの筆頭かもしれません。日ごろからスタッフの言動には注意を払い、院長として公平な視点でジャッジすることが求められます。
最悪の場合スタッフの離職に繋がることもあるので、問題だと感じたときは早めに対処しましょう。
クリニックが軌道に乗るころにありがちなのが、「待ち時間が長い」「予約が取れない」といったクレームの発生です。
これはクリニックの広さや設備面と、スタッフ数が起因であることが多く、堅実な事業経過にするほど起こりがちなトラブルだといえます。
院長を含め診療のキャパは有限なので完全に解決することは難しいかもしれませんが、待合室や動線の見直し、予約システムの導入などで改善する可能性もあります。
クリニックが次のステージに進む頃合いだと捉え、改善方法について検討してみることが重要です。
クリニックの開業に至るスケジュールは中身も濃く、やるべきことも多い大変な作業になります。
その作業をスムーズに進めるためには、専門家の力を活用することがオススメですが、まずは先生ご自身が一連の流れを理解していることが重要です。
本記事でスケジュールの大筋をご理解いただけたら、枝葉の部分に感じては「使えるものは何でも利用する」というスタンスで問題はありません。