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コラム

【補助金で開業!?】クリニックを開業するときに使える補助金・助成金

クリニックの開業を考えたとき、開業費用やスタート後の運転資金などお金の悩みは尽きないものです。

しかし補助金や助成金を活用することで、資金的な負担を大きく減らすことが出来ることをご存知でしたでしょうか。

本記事では、クリニックを開業するときに使える補助金・助成金や、開業後からでも活用できるテクニックについて詳しく解説します。

補助金と助成金の違い

補助金や助成金という名称はよく耳にすると思いますが、その違いについては意外と知られていないものです。

この二つの大きな違いは、主に管轄している省庁や支給する目的など、また受給の難易度などとなっていて、大まかにまとめると以下の通りです。

 補助金助成金
主な管轄経済産業省厚生労働省
目的事業拡大や設備投資など経済活動の支援雇用促進や職場環境の改善など
受給の難易度予算が限られ、審査で採択されないことがある要件さえ満たせば、ほぼ100%受給できる
返済の必要なしなし
 

補助金と助成金を比較すると、補助金のほうが給付額は多い傾向があり、場合によっては数十億円にもなることがあります。

一方で助成金は、社会情勢に合わせ常に新しい助成があり、コロナ禍における「雇用調整助成金」や「休業補償」などが記憶に新しいのではないでしょうか。

補助金・助成金の最大のメリットは原則返済不要であること

補助金や助成金は、社会的な目的をもって給付されるもので、クリニックにとっても資金面で助かるものです。

そして補助金や助成金の最大のメリットは、給付額が原則返済不用であることで、不正受給でもないかぎり言葉は悪いですが「貰いっぱなし」ということでしょう。

とはいえ、後ろめたさを感じる必要は全くなく、給付額を有効活用して補助金・助成金の目的をしっかり達成すればよいのです。

クリニック開業時に使える補助金と助成金

 

クリニックの開業にあたり利用できそうな補助金と助成金について、個別に確認していきます。

個々の内容について解説しながら、具体的な活用方法についても考えてみます。

1.IT導入補助金

「IT導入補助金」とは、中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上を目的として、ITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)の導入を支援するための補助金です。

対象事業者にはクリニックも含まれ、ITツールの導入費用が補助の対象となります。

資本金3億円以下で常時雇用の従業員数が300人以下のクリニックが補助金の対象になるので、まず事業者要件で外れることはないはずです。

電子カルテやレセコンのITツールが最大450万円補助されるので、開業にあたっての負担軽減になります。

ただ、対象になるITツールはあらかじめIT補助金事務局に登録されているITツールのみなので注意しましょう。

補助額は、A類型が30万〜150万円未満、B類型が150万〜450万円以下で、取得費用の2分の1が給付されます。またクラウド型サービスを利用するケースでは、利用料が最大2年分給付されます。

2.医療施設等施設設備費補助金

「医療施設等施設設備費補助金」は、へき地医療の確保及び臨床研修医の研修環境の充実等を図ることを目的とする補助金で、厚生労働省が管轄しています。

かなり目的の限定された補助金ですが、以下の10事業が対象になっているので、該当しそうな場合は利用を検討してみましょう。

補助対象区分補助率下限額
へき地診療所2分の11か所につき1,000千円
過疎地域等特定診療所2分の11か所につき2,500千円
へき地保健指導所3分の1(沖縄県は2分の1)1か所につき1,666千円(沖縄県は2,500千円)
研修医のための研修施設2分の11か所につき1,000千円
臨床研修病院2分の11か所につき1,000千円
へき地医療拠点病院2分の11か所につき2,500千円
医師臨床研修病院研修医環境整備3分の1
離島等患者宿泊施設施設整備事業3分の1
産科医療機関施設整備事業3分の11か所につき666千円
死亡時画像診断システム等施設整備事業2分の1

補助金を受給するための要件は、各事業によって異なるので事前に確認が必要です。

3.ものづくり補助金

ものづくり補助金は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」で名前から想像するとクリニックとは関係がないように思えないでしょうか。

しかし「ものづくり補助金」は、業種に関係なく、生産性向上につながる設備の導入であれば補助対象になります。

ただ、医療法人や社団法人は補助対象とならないので、個人経営のクリニックだけが申請可能です。

この補助金は医療機器の導入などに活用でき、補助額は従業員の人数で異なりますが、最大で1,250万円まで受給可能となっています。

ただ「ものづくり補助金」は、申請時点で事業を開始していることが条件なので、開業に利用することはできません。

4. 事業再構築補助金

今もコロナ禍の影響が残るなか、細々と続いているのが「事業再構築補助金」です。完全にコロナ対応の補助金なので、これから開業される方には関係ないでしょう。一応、給付対象を説明すると以下のとおりとなっています。

①2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。

②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。

5. キャリアアップ助成金

クリニック経営においても「人手不足」は決して他人事ではない重要な課題で、人材の定着に苦労している経営者も増えています。

そこで活用できるのが「キャリアアップ助成金」で、この助成金は非正規雇用労働者の雇用条件改善を目的に設けられた制度です。

バイト・パート・派遣社員・契約社員など、俗にいうところの「非正規雇用者」を正規雇用にしたり、待遇を改善したりする事業所に給付されます。

この助成金も「開業後」にしか利用できませんが、従業員の定着化を考えるのなら有効活用することがオススメです。

主な申請コースと支給額は以下のとおりなので、活用するために専門家を活用しましょう。

① 有期雇用→正職員 :57万円
② 有期雇用→無期雇用:28万5,000円
③ 無期雇用→正職員 :28万5,000円

所定の基準による生産性の向上が認められれば、①の場合は72万円、②または③の場合は36万円が支給されます。

6. 人材開発支援助成金

「人材開発支援助成金」は、クリニック経営者が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

つまり、クリニック経営に役立つ技能を取得させるために支出する経費の補填ですが、人材開発支援助成金は正社員が対象となっています。

この助成金を利用するケースは、経営するクリニックをライバルと差別化するときに活用できるのですが、悩ましいのは「職員を研修させる余裕」がある必要があることです。

一般的な事例をいえば、開業当初のクリニックは「猫の手も借りたい」状況になるので、研修させる余裕はないのかもしれません。

「人材開発支援助成金」は、クリニック開業後、他院との差別化のため利用するのが現実的な補助金だといえます。

7. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)

「特定求職者雇用開発助成金」は、高年齢者や障害者などの就職困難者をハローワークなどの紹介によって、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して助成される制度です。

あまり大きな声で言えませんが、開業当初にこのような労働者を雇うことは現実的ではありません。

確かに障害者をバックアップすることは社会正義なのかもしれません。とはいえ、理念だけで飯を食えないのは事実なのです。

国や地方公共団体ですら障碍者雇用を達成できないことを考えれば、理念より現実を優先すべきでしょう。

8. 職場定着支援助成金

「職業定着支援助成金」は、事業所の離職率低下を目的としている助成金で、厚生労働省が実施しているものですが、その効果は微妙な感じだといえます。

ただ、先ほどのキャリアアップ助成金のように目的が一致したら使うべき助成金で、申請基準も緩やかです。

助成金の支給要件は、雇用管理制度整備計画書の策定と認定、雇用管理制度整備計画書に基づく制度の実施ですが、手間の割に助成額は最大で75万円支給となります。

9. 地域雇用開発助成金

「地域雇用開発助成金」は、求人の少ない過疎地域などに新たにクリニックを開設し、その地域の人を従業員として雇った場合に受給できる助成金です。

地域雇用開発助成金の対象になる地域は、次の3つの区分で指定されています。

同意雇用開発促進地域求職者数に対して求人数が大きく不足している地域
過疎等雇用改善地域若年層や壮年層(主に15歳~44歳)の流出が特に進んでいる地域
特定有人国境離島等地域国境近くにある全国の離島

このように助成対象地域はかなり限られているので、これからクリニックを開業される方にとって使いにくい助成金かもしれません。

なお、助成金を受ける場合の雇用は、ハローワークなどの紹介で雇い入れる必要があります。

補助金・助成金を使うために注意すべきことは?

クリニックが利用できる補助金・助成金が意外と多いことが分かったと思いますが、それらには国や地方公共団体の目的があることから、安易に飛びつくべきではない注意点もあります。

そこで、補助金・助成金を使うにあたって気を付けるべきポイントについて、シチュエーションも併せて説明します。

必ず受け取れるとは限らない

冒頭でも説明したとおり、助成金に関しては要件さえ満たしていれば”ほぼ100%”受給できるのですが、補助金の場合は必ず受給できるとは限らないことには注意しましょう。

つまり補助金を当てにしたクリニック開業計画は、受給できない時点で破綻するわけで、補助金・助成金はあくまでプラスアルファのものだと考えることが大事です。

特にクリニック開業では、設備の選定やスタッフの雇用などのほか、厚生局への届け出など膨大な作業が必要なので、補助金・助成金のことは後回しになりがちになります。

事業計画においても、補助金・助成金はサブ的な扱いにしておくことをオススメします。

すぐには支給されない

補助金・助成金は、銀行など金融機関の融資と違いすぐには支給されないので、資金計画で当てにしていると思わぬ失敗をすることになります。

コロナ関連の助成金が受付側の混乱によって大幅に遅れてしまい、大きな批判を受けたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

事業計画と資金繰りを詳しく検討すれば分かりますが、大事なことは使うタイミングで収入金額が手元にあることです。

この点については自分だけで考えるのではなく、クリニック開業に精通したコンサルタントなどの力を借りるべきでしょう。

クリニック開業で使える補助金・助成金のデメリットは?

補助金助成金のデメリット


返す必要のない補助金・助成金は、何かと物入りなクリニック開業の大きな助けになる存在です。しかし、そのようなメリットがある一方で、補助金・助成金を使うデメリットもあります。

デメリットと感じるかは、クリニック開業に向けた事業計画次第ですが、どのようなデメリットがあるのかしっかり確認していきましょう。

原則として後払いである

補助金や助成金は、目的に合っている支給対象者が申請内容通りの活動を行っていたのか審査したうえで支給の決定がされるので、支給開始まで時間がかかります。

迷惑な話ですが、世の中には補助金や助成金を不正受給するものがおり、そのような行為を防ぐ意味でも審査が遅れがちです。

つまり、受給できる補助金や助成金は基本的に「後払い」となるので、あまり必要性のない条件が付されているものは利用しない方が良いでしょう。

要件を満たすために資金が必要な場合がある

補助金と助成金を比較すると、補助金の支給金額が大きいことが分かると思いますが、ほとんどの場合は要件を満たすために事業費を自分で用意する必要があります。

これは、補助金が「実際に行ったことに対して支給される」という性質のものだからで、目的を遂行できる事業者であることが条件だともいえるでしょう。

それは助成率を見ても分かりますが、支出に対して受給できる金額は2分の1〜3分の1程度です。

つまり本当に必要な設備投資などに対して公共性や公益性が高いと認められたら、自前で支払った費用を後から補填してくれるものだという理解でいましょう。

融資の担保になる場合がある

補助金について注意を要するのは、先ほども説明したとおり設備投資等の支出を先にしなければならない点です。

もし補助金支給対象の設備投資をするため銀行融資を受ける場合、補助金の受給資格が(実質的な)担保になることがあります。

実はこれが厄介なことで、補助金の交付を受けて整備された施設や設備を、補助金の交付の目的に反して担保に供することは「財産処分」に当たり、事前の承認が必要となる行為です。

クリニックの経営が順調に行くのなら問題になることはありませんが、もし上手くいかない場合は大きなリスクになる可能性があります。

安易に考えていると、医師としての人生に傷がつくことになるので、専門家の助言も聞いておきましょう。

クリニック開業の補助金・助成金制度に関するよくある質問

クリニック開業の補助金・助成金制度に関するよくある質問


クリニック開業の補助金・助成金について、よく見られる素朴な疑問について、その回答を見てみましょう。

質問1. 補助金・助成金の申請書類などはどこでダウンロードできますか?


クリニック開業に役立てることのできる補助金や助成金は、国の行政機関や全国の自治体が事業主体となって公募しています。目的の補助金・助成金の申請書類は、それぞれの事業主体のホームページからダウンロードできますが、それを探すのも一苦労です。

medi-tax株式会社では、無料セミナーなどを通して医師の皆様に必要な情報を提供しておりますので、申請書類のことなどもお気軽にご相談ください。

質問2. 補助金・助成金の申請は誰に相談すればいいですか?


補助金や助成金の申請は、書類を作成するだけの行政書士や、クリニック開業に関するトータルサポートをする専門コンサルタントなど、様々な代行業者があります。そこで考えて頂きたいのが、「どのような目的で助成を受け、それをクリニック経営にどう役立てるか」ということです。クリニック経営は、開業までだけではなく末永く堅実な経営プランが必要なものなので、しっかりとしたコンサルタントに相談する事をオススメします。

質問3. 申請にはどのくらいの期間がかかりますか?


補助金や助成金は、申請する内容によって必要な期間が大きく違ってきます。助成金の場合は対象となる事実さえあればすぐにでも申請できるのですが、補助金のハードルはかなり高くなるのが現実です。助成金の種類によって流れは若干異なりますが、基本的には以下の流れで進みます。

1.実施計画の作成
2.実施計画に基づく事業の開始
3.助成金の申請
4.助成金の支給決定

実施計画の申請とその受理から、実際の申請まで長ければ1年程度の期間が必要です。この点も踏まえた事業計画の策定が重要となります。

質問4. 申請に失敗した場合、再度申請が可能なのか?



助成金の申請は、審査によって落とされる場合がありますが、その場合は再度の申請が可能です。ただ、助成金の種類によっては再申請まで一定期間を置くことが必要ですが、一発試験とは違うのでご安心ください。

補助金・助成金申請はプロに代行依頼することができる

一念発起してクリニック開業を考えたとき、その夢に向かって準備する作業は膨大な量になってしまいます。

普通であれば勤務医師として働きながら、それと並行して開業準備をするのですが、独力で進めるのは不可能だといえるでしょう。

一般的なケースでも外部のコンサルタントを利用することがほとんどで、補助金・助成金の申請もプロに依頼することが普通です。

medi-tax株式会社では、補助金や助成金の申請代行だけではなく、それを利用したトータルコンサルタントでクリニック開業を支援しております。

クリニック開業にむけた事務的な作業はプロへ依頼し、先生方は理想の利用を考えることに集中しましょう。

最後に

クリニック開業に利用できる補助金や助成金を解説してきましたが、これらは「条件が合致したら補助的に利用する」と思っておいた方が健全な考え方です。

そのために重要なのは、どのような理想をもってクリニックを開業するかで、その理念を事業計画に落とし込み確実に実現するためには、ご自身の負担を減らすことが最適な進め方だといえます。

medi-tax株式会社は、豊富なノウハウをもとにクリニック開業をトータルでサポートしております。

まだビジョンが明確ではない段階でも、ご相談を賜っておりますので、是非ご一報ください。