コラム
「クリニックの開業準備は順調。しかし、オープニングスタッフの採用が思うように進まない」
「採用したスタッフがすぐに辞めてしまう」
このような悩みを抱える院長は少なくありません。
クリニックの開業と安定化のためには、優れたオープニングスタッフの存在が欠かせません。
しかし、コミュニケーション不足や労働条件・教育体制の未整備、採用のミスマッチなどが原因で、スタッフが辞めてしまうクリニックも多い状況です。
本記事では、オープニングスタッフが辞めてしまう理由とその回避策、スタッフの採用で心掛けたいポイントや募集方法についても解説します。
ぜひ、クリニックを開業する際の参考にしてください。
オープニングスタッフが辞めてしまう場合、以下のような理由が考えられます。
それぞれ解説します。
多くの院長は勤務医から独立して開業するため、経営者としての経験が不足しています。
そのため医療の専門知識はあっても、経営やマネジメントのスキルが不十分な場合が多いので
す。
院長は開業後、クリニックのトップになります。
リーダーシップや部下のマネジメントスキルが求められる立場ですが、開業までの間にこれらのスキルを身につける機会が少ないのが現状です。
また、適切な給与体系や最適な職場環境の提供など、労務に関する知識が不足していることがあります。
これらが原因でスタッフの不満が蓄積してしまい、離職につながる可能性があるのです。
クリニックでは日々の業務に追われ、院長とスタッフがゆっくり話す機会が少ない場合があります。
特に、オープンしたばかりのクリニックは運用開始間もないため、体制が整っていないことも多いでしょう。
そのため、スタッフが悩みや問題点を院長に伝える機会がないクリニックも少なくありません。
コミュニケーション不足は、スタッフの悩みや問題点を早期に把握する機会も失いがちです。
これにより、問題が大きくなってから対処することになり、解決が困難になるケースもあります。
多くのクリニックスタッフは給与の低さや労働条件に不満を感じています。
日本労働調査組合の調査によると、クリニックを辞めたくなった理由の第1位は「給与・待遇不満」で、49.3%を占めている状況です。
具体的には以下のような不満があります。
特に、個人経営のクリニックにおいてはこれらが整備されてなく、改善される機会も少ないとされています。
また、これらは一部の理由に過ぎません。
クリニック経営者は、スタッフの声に耳を傾け、継続的な労働環境の改善に取り組むことが重要です。
参考:PR TIMES「看護師辞めたい。60%以上が退職を検討している結果に。「看護師の退職動機に関するアンケート」結果発表」
一般的に、クリニックの新人研修期間は半月〜1ヶ月程度とされています。
しかし、新規開業するクリニックの場合、この期間が十分に確保されずに開業を迎えるケースも少なくありません。
開業までには、医療機器の操作方法・電子カルテの使用方法・接遇訓練など、多岐にわたる内容を学ぶ必要があります。
もし、開業までに必要なスキルや知識をスタッフが習得できずにいると、不安を感じる恐れがあります。
また、開業後も継続的な教育が必要です。
職種別の研修や接遇マナー研修・レセプト研修などの教育がされていない場合、スタッフのスキルアップや最新情報の習得が困難になります。
クリニック経営者は、継続的な教育や個々のスタッフの成長を支援する体制を整えることが重要です。
クリニックを開業する場合やることが多く、時間が足りない、スケジュールぎりぎりで対応するケースがほとんどです。
そのため適切な採用スタッフを踏まずに、急いでスタッフを採用するケースも少なくありません。
スタッフの採用を急ぐあまり、経験や適性をきちんと判断せずに採用してしまうと、スタッフの現状にキャップを感じてしまうこともあるでしょう。
またスタッフにおいても「理想と違った」という印象にもなりかねず、早急に退職につながるケースもあります。
自院に合うスタッフの採用には、適切な採用ステップを踏みながら書類選考や面接での見極めが重要です。
クリニックでオープニングスタッフの退職を回避するためには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは回避方法について紹介します。
オープニングスタッフの退職を回避するためには、コミュニケーションを欠かさないことが非常に重要です。
定期的な個別面談やチームミーティングは、情報共有や相互理解のためにも必要不可欠です。
また心理的安全性の確保のために、オープンな雰囲気づくりも意識しましょう。
スタッフが自由に意見を言える雰囲気を作ることで、問題点や改善案が出やすくなります。
オープンな雰囲気作りのためには、院長自ら積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。
院長自ら積極的にコミュニケーションをとることで、スタッフも安心して話すことができます。
オープニングスタッフの退職を回避するためには、採用前に労働条件などを決めておくことが重要です。
特に労働条件については、労働契約の際にその条件を明示しなければならないと法律で定められています。
スタッフを雇用する前に必ず労働条件を書面で提示して、その写しを保管するようにしましょう。
これらの情報を採用前に明確に提示することで、応募者との間でミスマッチを防ぎ、入職後の不満や離職のリスクが低減できます。
スタッフの離職を防ぐために、教育や指導体制を整えるようにしましょう。
教育体制を整えることで、スタッフは必要なスキルと知識を効果的に習得できます。
これにより、業務に対する自信が高まり、モチベーションの向上にもつながります。
特に経験の浅いスタッフにとって、適切な指導体制は重要です。
また、スタッフ同士でお互いをサポートする体制の構築にも努めましょう。
これにより、スタッフの成長だけでなく、スタッフ同志のコミュニケーションや関係性の構築にもつながります。
オープニングスタッフを採用する際は、以下のようなポイントを押さえると良いでしょう。
それぞれ解説します。
採用活動は一般的に、クリニックの開業3〜4ヶ月前から始めることが推奨されています。
しかし、医療業界では慢性的な人手不足のため、さらに早めて開始する必要があります。
採用活動のステップは以下のとおりです。
中でも、求める能力やスキルを明確にするのは重要です。明確にすることで、ミスマッチを防止できます。
また、慢性的な人手不足を解消するために、幅広い媒体を用いて募集しましょう。
採用計画から募集までどれくらいかかりそうか想定し、スケジュールに余裕を持たせた採用が重要です。
書類選考も重要ですが、面接の際に応募者に適性がありそうか見極めなくてはいけません。
以下を踏まえて確認すると良いでしょう。
これらは書類では判断できないことです。応募書類の内容で気になるポイントがあれば、面接で掘り下げて確認しましょう。
面接では、応募者の経験や能力だけでなく人柄や価値観もしっかりと見極めて、トータルで判断することが大切です。
クリニックスタッフは患者と医師の橋渡し役となるため、コミュニケーション能力が不可欠です。
コミュニケーション能力は橋渡し役だけでなく、スタッフ同士の連携やクリニック全体の運営にも影響を及ぼします。
適切なコミュニケーションがとれない場合、医療の質にも影響を及ぼしかねないからです。
面接では、以下の点を意識してみましょう。
適切なコミュニケーション能力を持つスタッフを採用することで、クリニックの円滑な運営と患者満足度の向上にもつながります。
オープニングスタッフの採用において、求める労働条件にマッチしそうか見極めることは非常に重要です。
クリニックが求める労働条件にマッチする人材でなければ、患者に十分な医療を提供できないからです。
まずは労働条件を明確にし、その条件で問題なさそうか面接時に確認しましょう。
マッチング確認のポイントは以下のとおりです。
こちらが求める労働条件にマッチする人材かどうか慎重に確認することで、離職を防ぐことができます。
オープニングスタッフの募集方法として、以下が挙げられます。
それぞれのメリットや注意点について解説します。
求人媒体を利用することで、幅広い層や多くの人材にアプローチできます。
最近では、医療分野に特化した求人サイトが多数あり、適切な人材が見つけやすくなっています。
特に複数名の採用を考えている場合には、求人媒体がおすすめです。
定額制の広告媒体を利用することで大幅なコストカットが可能だからです。
一方で、多くの広告媒体は前払いの定額制であり、応募が集まらない場合でも費用が発生します。
また、一度掲載した内容は変更するのが難しいケースが多く、条件変更や要件の絞り込みに対応できない場合があるので注意しましょう。
人材紹介会社の利用で、より自院に合ったスタッフの採用が期待できます。
特に全国に拠点がある人材紹介会社を利用すれば、その可能性も高まります。
人材紹介会社にて、経歴やスキル・資格・雇用形態といった条件をもとに人材を探してくれるため、クリニック側は採用活動の一部を省けるのもメリットです。
ただし、直接応募で採用した場合よりも採用コストが高くなります。
紹介料は、採用するスタッフの想定年収20〜30%が相場と言われているからです。
また、地方では人材紹介会社や登録者が少ない傾向にあるため、都市部に比べて選択肢が限られてしまう可能性もあります。
SNSは基本的に無料で利用できるため、広告費用を抑えられるのがメリットです。
多くの人が利用している媒体なので、幅広い層の求職者にアプローチできるのも魅力です。
また即座に募集情報が発信できるため、時間をかけずに募集できます。
一方で、効果的なSNS運用には専門知識が求められます。
そのため、フォロワーを増やしたり効果を実感したりするまでには、一定の期間が必要です。
SNSを活用したスタッフ募集は効果的な方法の一つですが、認知までに時間がかかるため、他の採用手法と組み合わせて活用するのが望ましいでしょう。
ハローワークは無料で求人を掲載できる行政機関の一つです。そのため、開業前の資金繰りが厳しい時期に適しています。
全国に事業拠点が設置されているため、広範囲に発信できるのが大きな特徴です。
また、労働基準法に違反している企業の求人は掲載できないため、求職者から一定の信頼を得ている媒体です。
一方で無料で誰でも利用できるため、必ずしも高スキルの人材が集まるとは限りません。
さらに多くの企業が利用するため、求人情報が埋もれてしまう可能性があります。
ハローワークは無料で利用できる点が大きなメリットですが、他の採用方法と組み合わせて活用すると良いでしょう。
ホームページは他の媒体を介さず直接募集できるため、採用コストを抑えられるのがポイントです。各種求人媒体とは異なり、文字数やデザインの制限なくクリニックの魅力や詳細な情報も掲載できます。期間の縛りもなく追加コストもかからないため、継続的な募集にも有効です。
ただし、クリニックの開業に合わせたホームページ開設が不可欠です。
また、魅力的で分かりやすいサイト構築が求められるため、専門家の協力も必要となり一定のコストがかかります。
ホームページでの募集は、クリニックの魅力を十分に伝えられる効果的な方法ですが、適宜メンテナンスも必要です。
知人などからの紹介によるオープニングスタッフの採用も方法の一つです。
紹介者が候補者を熟知しているため、職場とマッチングしやすい人材を採用できる可能性があります。また、求人広告費や人材紹介会社への手数料が不要なので、採用コストも抑えられます。
一方で友人・知人からの紹介は、細かい労働条件の確認が不十分になりがちです。
確認が不十分なまま採用してしまうと、条件面に不満を持ったり早期離職にもつながったりするリスクも否めません。
仮に職場が合わずに退職してしまった場合、紹介した知人との関係性が悪くなる可能性もあります。
クリニックのオープニングスタッフの退職を防ぐには、経営者としての視点と働きやすい環境づくりが不可欠です。
採用前に労働条件や研修計画を明確にし、採用には求人媒体や人材紹介会社、SNSなどを組み合わせて募集すると良いでしょう。
開業後はスタッフとのコミュニケーションを密にし、定期的な個別面談やミーティングを通じて悩みを把握・解決することが重要です。
教育体制も整えて、スタッフが自信を持てる環境と、働きやすいクリニックを目指しましょう。